埋めたがってるのは君だ
「いい加減にしたら?」
「…何が」
上手く立ち回ってるつもりなんだろうけど、バレるのも時間の問題だよ。全部、みんなみんな自分のモノにして愛されたいなんて欲張りすぎだ。
「せめて女の子だけにしときなよ」
「綾時が言うか」
「友情まで絡めとるなんて痛まないの?」
「…さぁ、自分から動いたつもりはないけど」
前髪に見え隠れする眼光が鈍く、それでも貪欲に揺らめいた。
似ている。
似過ぎて一番遠くに感じる。触れてはいけないもののように。まるで磁石の同極のように反発する。
「みんな知ったら傷つくよ」
「みんなカタチが欲しいだけだ。同じように愛を注いで…って結構大変なんだよ?」
まるで、感情が無いかのように。ただ口元が動く。
でも。
「愛を欲しがる。飢えてる。自分を実感したがってる。だから僕は応えた。それだけのことだ」
「…ふふ」
「何が可笑しい」
「可笑しいよ」
隠せない。僕達は似過ぎている。
「埋めたがってるのは君だ」
可哀想だね。
誰かに愛されることで自分の存在を主張する。それを他人のせいと押し付けて。空いた隙間を埋めたくて。
彼は一瞬スッと猫のように目を細めると、何事も無かったように顔を戻した。
たとえカタチだけでも幸せにすることが出来るならそれでも良いと思うよ。
だけど。
「どうでもいい?」
「ああ、どうでもいい」
「そう」
だけど。
「僕はカタチだけじゃないものが欲しくなったから。僕の領域には入ってきて欲しくはないかも」
「…どうでもいい」
「そう」
「大体、入れないだろ」
僕達は似過ぎている。
fin. 2007/11/26