PERSONA3 UNDER TEXT

白の悪魔に復讐劇を


「わーったよ…好きにしやがれ」

 後ろ手に縛られたまま足を投げ出している三科を悪意が滲んだ笑みで見下ろした。




 春日山高校。通称カス校の地下に設けられた暗い暗い防空壕の中。恐ろしいと遠のく者もいれば、影では最高のヤり場だと評判であったりする。

 もちろん普段なら手下に成り下がってしまった自分が三科相手に邪悪な笑みなど浮かべるほどの余裕は無いのだが、なにせ今日は『保険』を持っている。絶対的な保険を。

 簡単に言ってしまえば、いつもコイツに鬱陶しいほど引っ付いている子分を人質にしたのだ。名前なんか記憶していない。とにかく子分その1、その2、その3だ。ソイツ等が帰っているところを仲間に拉致らせて顔がちょっと分からなくなる程度にしてやった写メを見せてつけてやる。

 俺が無事にコイツ等の所まで戻らなかったら、コイツ等どーなっかなァ…      ついでにそう言えば途端に三科は大人しくなった。

 この何重の意味にも馬鹿な番長は絶対に裏切ることは無い。何とも自己犠牲がお強いことだ。



 抵抗しないことをいいことに、弾力の無い薄い腹を何度も蹴り飛ばした。耐える声がたまに微かに漏れると異常に興奮し、人工的な派手に装飾された顔を殴りつけ、蹴り上げ、泥と血で汚すと恍惚に酔いしれた。靴先で頬を踏みにじると汚れと赤く擦れた痕が付くが、青白い血色はそのままだ。

「テメェ顔は塗ってねぇのかよ?」

 乱暴に足を退けて聞けば、三科は血を吐き出して返すだけだ。なら目で見て確かめようと思い、学ランを掴んで自分の傍まで無理やり引き起こす。二つ目のボタンが引き千切れ、弾け飛んで乾いた音が響く。

「ぁ?…オイ、これ絞まってんじゃねぇのか」

 引き起こして近付いた距離になって気付いたが、ジャラジャラと重そうだと思っていた首のアクセサリーは輪の大きさがまちまちで、輪の小さいものはどこかの民族並みに軽く喉に喰い込んでいる。呼吸に影響を与える程ではなさそうだが、多少は血管を圧迫しているように見える。明らかに身体に良いものではないことは確かだ。真っ白な肌に何か塗った境目は見当たらない。細い首にシルバーの輪が絡み付き、その先に続く肌は末端まで白い。もしかしなくとも血流の流れを遮って造り上げた肌だ。

 それだけではなく、長身の割りに脂肪が異常に無い筋肉だけの筋のような身体。自己犠牲どころではない。ナルシストの以前にこの男は自虐的だ。

「ッ!!い゛っ      …ぐ、ぁ…テメ、ェ…ッッ」

 引き起こして膝立ちになっている三科の急所を踏みつける。一際悶絶しかけた三科を見て厭らしく唇が歪む。

「テメェ…マゾだろ?なァ、痛いだけじゃねぇんだろぉ?」
      …、…っぎ本…、潰す…覚えとけよ…ッ」

 声を喉にへばり付かせて脂汗を掻いているが、それでも強気な眼は弱まらない。殺すとは言わないのが三科らしいと鼻で笑った。

「とりあえず全部剥かねぇとなァ?両手両足もぐのはそれからだ」
「…ッ、まだ足んねぇのか」
「ったりめぇだろッ!テメェには死ぬほど苦しんでもらわねぇと気が済まねぇ!!」

 語尾と共に蹴り飛ばして倒れたその身体に圧し掛かり、学ランの中に着込まれていたセンスの悪い布をポケットに潜ませていた小型のナイフで滅茶苦茶に切り裂いてやる。肉が一緒に裂けようが構わない。踊る腕に布と血がついてくるのが面白い。無残に裂かれて身体に絡みつくように残った布切れを手で引き千切る。露にされた上半身の裸体。

「…、…」

 一瞬身体の機能が停止した、無意識に喉を鳴らしてしまったかもしれない。

 暴行した箇所が内出血して、裂けた皮膚から鮮血が溢れている以外真っ白で痩せた身体は彫刻の作品を思わせた。思わず掌で触ると悪い頭では時間がかかったが、陶器のような肌触りで、それでいて骨が浮き出そうな程なのに少なく薄い筋肉は鍛え上げられている。多分そうでなければこの痩躯なら簡単に骨が砕けてしまうだろう。血流が悪いせいか、ひんやりとした気がしたが、血が滲み出ている箇所は熱を持っていてヒトだと思えることが出来た。

       …血が映えるとかやっぱコイツ普通じゃねぇ。

 傷口に指を減り込ませるとさらに熱くて微かに呼吸と共に脈打っていた。指を動かす度に水音がして、真っ赤に裂けてテラテラと滑光る肉が女の性器を連想させた。いや、正確に言うと実物はお目にかかった事が無かったが、知り合いの知り合いの知り合いから借りたことがあるどこぞの海外版無修正ポルノを拝見したときのソレと同じだと思ったのだ。

 もっと抉ってココに捩じ込んでやれば、きっと素晴らしい快楽を味わえるんじゃないか、そう思った。深爪気味の指で肉を掻いて呻かせたところで、ふと考えが浮かぶ。

 どうせなら元から開いてる穴に捩じ込めばいいんじゃねぇか?

 確か拷問等で同性にレイプされるのがあるとかどうとか。詳しいことは知る由も無かったが自分の頭で考えれば納得する。手下の野郎にネコにされていい様に扱われるなど屈辱以外の何物でもない。野郎相手に、という考えは暴行と陶酔による興奮で勃ち上がってしまっている分身には何のセーブにもならない。それに打撃には耐性がある奴が中からの責め苦にはどう反応するか興味がある。切り刻むのはそれからでもいい。


 最初から過去の恨みでパンツを下ろしてやるのは決定事項だから、なんの躊躇も無く下着ごと手にかけて引きずり下ろしてやる。もちろん三科がされるがままになっているはずもなく激しく抵抗されたが、うつ伏せにして背を強く踏んでやれば、脱がす時間を多少長引かせるだけに終わる。

 ついに下半身も剥くと身体を蹴り転がして仰向けに戻し動かないように今度は腹の上に足を置く。後ろ手に縛られているために腕に通されたままの学ランと白い肌に絡みついたアクセサリー以外何も纏っていない裸体。悔しそうに歪められた顔は血色が悪いながらも赤くなっていて、やっぱり肌は塗っていないんだと思った。

「っ…これで満足かよ…足退けろ…ッ。腕が痺れてきた」
      …、ふざけんな。これからだろうがよッ」

 踏みつけた足でさらに腹を攻撃した。

 思考が止まるのは二度目か、付いているモノは同じはずなのに女の身体を見たときのような興奮と衝撃を覚えた。と同時にそれを自覚して困惑と嫌悪を抱く。しかし、これもこの憎くて堪らない相手を貶める手段だ。何より熱を持った己がこのままでは治まらない。

「…足開け」

 膝を折り曲げて顔を近付けて言った。ただ目線は顔から首元にかけて忙しなく動いてしまっていた。三科は理解出来ていないといった顔を自分に向ける。もう一度同じ台詞を口にした。二度目は流石に眉を深く寄せて、懸念の疑問符が付いた声を投げてくる。

「死ぬより酷ぇ目に遭えよ」

 鳥の足のように筋張った細い足首を掴んで無理矢理開かせる。驚愕した三科の目は大きく開かれ、逆に暖色色の瞳孔はキュウッと縮まった。

「っ…!?おいッ、っざ…けんな!!」
「ッグ…!!」

 暴れた三科の足が自分の顎にヒットした。反撃されたことに逆上して膝辺りを絞るほど掴んで顔の横まで無理に折り曲げて押さえつけた。この細さと白さなら強く掴むだけで痣になるだろう。

 下敷きになった腕と圧迫された胸に苦痛の色を含んだ息を漏らしたが、それ以上に今の痴態と恥辱に耐えられない風だった。自分のモノが眼前に迫り、さらにその上に足を押さえる人間が圧し掛かるように体重をかけている姿だ、精神的に限界線をブチ破るには十分過ぎる。

 三科は一瞬錯乱状態になりかけていたが、それもあの言葉を口にすれば耐えるしかなくなる。

「大人しくしてろよぉ…?テメェの可愛い子分に五体満足でいさせてやりたかったらなァ」

 お優しくて馬鹿な番長さんは小さく唸ると、身体を震わせながらも暴れることを止めた。青白い肌が恥辱で赤く染まっていたが、怒りなのかさらにカッと顔に一段と赤みが差した。きつく睨まれた瞳には殺気すら感じられたが、この体勢と手元の保険保有では効力が弱い。

「…ここまで好き勝手しただろーが…だからアイツ等はもういいだろッ。腕もさっさと解きやがれッ」
「そーいう態度の限りはこのまんまだなァ…つーかよぉ、今のテメェの状況自覚してんのかよ?」

 自分でも口元が厭らしく斜めに歪み上がったのが分かった。見下ろす先には負の感情が膨れ上がっていて、保険が無ければ頭突きでもかまされて鼻が曲がっているか、噛み付かれて身体の一部とサヨナラしていたところだろう。それには多少寒気を覚えるが、比例して自分よりも強いものを捩じ伏せるということに支配欲が満たされ、嗜虐心が溢れ出る。

 見せ付けながら膝から締まった内腿を一度に舐め上げ、付け根近くに歯をギリリと立ててやった。舐められたことに息を飲み、噛まれたことに身体を跳ねさせるのが目に楽しかった。

 気付いたときには自分の分身が完全に鎌首を擡げていた。アドレナリン自体は獲物を捕らえた瞬間、いや計画を考えたときから既に出ていた気がする。

 スラックスのチャックを下げ、窮屈になった下着から盛る熱の塊を取り出す。足に口を触れさせた瞬間から三科は酷く動揺していたが、流石にこちらの性器まで曝け出すとなると、何をするか、何をされるか分からないといったような恐怖からか、怯えの表情が張り付いていた。

「っつ…杉、本…?何してんだよ…」
「ぁー…その顔ソソんなァ…番長さんの恐怖に引き攣った顔なんてレアもんだよなァ」
「何…、      !!っ…な゛っ、あ゛…ッ?!」

 先端を持ってそのまま捩じ込もうと無理矢理挿入してみるが、締まりがきつくて進まない、というか埋めることが出来ない。

 まぁ簡単に挿入出来るほどユルユルガバガバのわけがなければ、そうであったら困る。

「っ…そん、なの…やめろっやめろッッ何やってやがんだテメェ!!」
「ちッ…挿んねぇな…どーやんだよこれェ…」

 声に怒気を含めながらこの透けるような白を早く割り裂きたいと疼く自身を一旦退いて、代わりに指を捩じ込んで頑なに侵入を防ごうとする壁を拡げてみる。冷静だったら排泄口に指やら性器を突っ込もうなんて吐き気ものだったが、とにかく挿れようと必死で、どこか焦っていた。もしかしたら自分の中では完全に先程の傷口のように女の性器として認識しているのかもしれない。

 三科は後ろ手で浮いた胸をさらに反らしてモゾモゾと虫のように逃げようともがいていた。下敷きの腕は圧迫され続けていたせいか青にまで変色していて、見るからにヤバそうだと思ったが、今手を自由にしてコイツが大人しくヤられているわけがない。保険のことを考える余裕も消えそうだし、仮に逃げるのを踏み止まったところで簡単に貞操を手下の犬にくれてやるほどの慈悲は持ち合わせていないだろう。あの隣人を愛せと教えるキリストだってそんな慈悲を持っているとは思えない。

 かといってうつ伏せにしてやるのも嫌だ。コイツが汚ねぇ顔で喘いで悶えて許しを請うのが見たい。その様を真正面から見下ろしてやりたいのだ。……こんな腕。こんな腕どうせ後から俺が貰うんだから構わない構わない。

 気を取り直すと、また指を適当に詰めて肉を押した。三科はやめろと吼え続けて、指が中を抉ると歯を食い縛っていたが、それでも堪える歯の隙間から悲鳴が漏れた。

 しかし、何の根拠か知らないが自分の美を謳っている割にはこういう色沙汰には関わりが薄かったのだろうか。とんでもなく間抜け面で必死だ。普段から青白い肌と青頭に怒らせたときの凶暴さからして悪魔に見えこそすれ、綺麗などと思ったことは一度も無いが。



 それにしても中々解れない。直腸なんだから腸液以外濡れる等しないのは当たり前だが、女の経験すら無いからどうすればいいか分からない。入り口付近なんか噛み千切らんばかりの締め付けだ。

 とりあえず自分のモノさえブチ込めればいいのだから、せめて指の数本が簡単に出入り出来るぐらいになればいい。ほとんど自棄に出し入れを繰り返していると、深爪気味の爪が突き刺さるように壁を抉ってしまった。皮膚の柔らかい感触が生々しい。三科は息を逆に吸ってヒィだの裏声のようなか細くて苦痛の悲鳴を上げた。

 挿入した指に生暖かい液体が絡みついた気がした。慌てて引き抜くとまるで生理中の女のように真っ赤な鮮血が付いていた。言うまでも無く腸壁を抉って傷付けたのだが、思わずコレだ、と思ってしまった。元は犯すつもりではなかったから全く必要な道具なんて所持していなかったが、これは僅かながら潤滑剤代わりになる。三科は痛みに震えていたが知った事ではない。むしろ鳴いてくれなければつまらない。

 傷付いた箇所にさらに爪を立てて出血を酷くする。堪らず三科は大きく声を上げて、それが一層興奮を掻き立てた。調子付いて血の助けで滑らかに出入り出来るようになってきた指を暴れさせて壁をさらに左右へと拡げる。そろそろ埋められるぐらいには柔軟になっただろうか。

「ぁ…あ゛あ゛ッ、や、やめ…やめろ、ぉ…ッッ」
「おーおー、よーやく本格的に鳴き始めたなァ。……マジ堪んねぇ。もう挿れれんだろ」
「ッ!?ま、待て…やめろっつってんだろッ、…っ、今やめたら無かった事にして…許して、やっから…ッ、だから      ぃ…ア!!ああッ…く、ぅ…痛ッ…!!」

 三科の訴えを無視して指を抜くと同時に腰を掴み上げて思い切り突き入れてやった。マゾ野郎はどうせ痛い方が好みなんだろう。血のせいか先端はスピードに乗ってズルッと埋まったものの、カリ付近できつくなって進まなくなってしまった。それでもとりあえず何とかして埋めてしまわなければいけないと勝手に急いて、下手をしたらこのままでも達してしまえるかもしれないほどの締め付けを受けながら無理に三科の腰を引き付けて埋め込ませていく。

 メリメリと中を裂きながら埋めていくのが本当に開拓しているようだと感じた。頭に血が昇って耳が熱くて堪らなかった。三科の1オクターヴ高くなった悲鳴をBGMにしながら時間をかけて進めて、ようやく根元まで埋めれて息を吐き出すことが出来た。


 中は素晴らしいとしか言い様がなかった。痛みが無いわけではないが、記憶の片隅に僅かだけ残る親に抱かれた時よりも心地よくて、雑誌や映像をオカズに慰めた時よりも天国に近かった。そうだ、一番天国に近い場所は島でも山でもない。此処に在るのだ。

 暫く動かずに感嘆していたが、より快楽を貪ろうと腰を揺らしてみた。すると三科が鳴く。また揺らす。また鳴く。

 恐らく動けばその度に刺激があるだろうから当然なのだが、つい思ってしまった。

 ひとつになっていると。

 他人の身体の中身に自分の一部が入っている意味では確かにそうだ。しかし、そうではなく今は同じだと、共有しているのだと、自分の動きが全て相手に与えて、伝わる。

 これってなんか、スゲェ。

 ヒトの命ひとつ分、若しくはそれ以上作りだせる儀式なだけはある。そう柄にもなく錆付いた頭でさえ思った。雄同士では子供なんて作れはしないし、嵌める場所も違うのだが、あくまで儀式として、だ。

「ンッ、ァッ、…う…ぅ、ンンっ、…た、ぃ…ッ、うあッ」

 自分が鳴かせている三科は単語すらもう口に出来ていない。目はきつく閉じられ全身が強張っている。痛みで食い縛っているが、"繋がっている"から突けば圧迫されて声が漏れる。ただ早く痛みが、行為が終わるのをひたすら耐えて待っているんだろう。いや、待つしかない。縛られているから何かに縋ることも出来ないで。こっちが天国ならコイツは地獄だ。地獄の苦しみ。


 ああ、違う。違った。ひとつになんかなっていない。……そうだ違う。

 …当然か。これは神聖な儀式じゃない。セックスじゃない。中からの破壊行動だ。細胞を壊してやっているんだ。

 何故って憎くて堪らないからだ。誰のせいで童貞だったと思ってる。何が悲しくて安いエロ雑誌やエロビデオを苦労して手に入れてこそこそと隠れて抜いてると思うよ。何で子分その1その2その3よりさらに子分でも大人しくしてなきゃならなかった?

 コイツが俺にこの上ない屈辱を味あわせてくれたからだ。

 イジメは駄目とかの名目で自分勝手な自己満足で制裁されたからだ。だから彼女にフラれて、中学生活を終わらされて、挙句手下に成り下がらせられた。だから憎い。世界で一番殺してやりたい程憎い。正論だろう、これは。されたから仕返してやったんだ。復讐してやった、ただそれだけだ。

 だから三科が地獄を見れば見るほどいい。儀式なんかじゃない、ただのレイプ。コイツが鳴くのは俺が鳴かしてやってるからだ。一方的に与えてるだけだ。注射器なんかと同じで、無理に刺激を加えた分が吐き出されているだけだ。そう、してやろうと思ったんだ。何がひとつだ。支配してやっているんだ。コイツはもう自分の思い通りになる玩具だ。最高だ。


      ぃあ゛ッッ…う…う…」
「…痛いかよ?なァ、痛ぇの?」
「ッッ……ン、っは、ぁ…い、…」
「萎えたまんまだなー…まだ痛ぇの足んねぇかァ〜。やっぱ先に腕落としとくか?なんかもう使いモンにならねぇ色してっしよ」

 ナイフを肌に滑らせて言ってみると咥えてる箇所がキュウッと縮まって締め付けてきて、思わず声を上げてしまった。相変わらず三科のモノは萎えていたが、腕を落とされる恐怖に震え上がったのか、それともやはり自虐嗜好で反応して疼いているのか。声に出さない、いや出せないだけかもしれないが、怯えて苦痛なのを隠しきれてない様はやっぱりいい。初めての結合に少々ファンシーな考えに浸ってしまっていたが、悶え苦しむ様は嗜虐心をまた湧き上がらせた。もっと鳴かせたい。



「…っ、ア…ふ、ン…あ…あ…」

 ガツガツと己を高めるために一心不乱で突いて天国の世界を味わう。熱中しているうちに三科の腕の色が多少良くなっていた。無意識に膝立ちになって、三科の腰を持ち上げた分、腕への圧迫が和らいんだんだろう。そのせいなのか完全に萎えていた三科のモノが心なしか勃っている気がしないでもない。手荒く扱っているのには変わりないのに反応があるということは腕の分の意識がこっちに向いたということか。

「やっぱ、痛ぇの、好きなんじゃねぇか…ッ」
「あ…ン、…ちが…ちが…、う…      んァッ」

 ビクリと身体を揺すり、明らかに悲鳴に鼻にかかったような音が混じった。苦痛しかないと思っていたからその喘ぎに驚き、敏感に反応した。

「ぁ?…何だ今の。何処突いた」
「は…あ…知…、ァ…!ああッ、や、嫌…ッ何…      

 ここか。腹側に確かに微妙に違う感触がある気がする。ここは性感帯か何かなのか。自分がオカズにするアダルトの類は年下ものや服従もののようなもので、一般に熟女モノ等に見られるような男を責めたりするようなものは観たことが無かったので性感帯が中にあるなんて知らなかったし知る必要も無かった。しかし今、ここが弱いと知って狙わないわけは無い。腰を引いて反動をつけ一気に突き破らんばかりに己を擦り付けてやる。

      ッッ…!!ンン…あッ、イああ…ッッダメ…ダメ、だ…ッ!やめ、うあ…ッ」

 どうやら相当イイらしい。ガクガクと震え、甘ったるくて甲高い声を張り上げていた。突く度に徐々に勃ち上がってきたソレの先からポンプのように白濁した液が垂れてくる。別に楽しませたいわけでは全く無いが、こいつの乱れっぷりが自分の昂る熱に刺激を与えたのは間違いない。

 そのままベストなポイントを狙って揺さぶり続けていると、血が巡ってきたらしい腕を暴れさせて、縛られて自由にならないのをなんとかしようとしていた。衝撃だけなら相当なものだろうが、無理矢理引き出された熱は肝心の涎を零して勃ち上がる塊に全く触れないままでは不完全燃焼のままなんだろう。余裕や強さなんてものはもう残っていない。

 もっともっと壊れるぐらいまで焦らして、その口で請わせてやろうと欲望に火をつけて、自分が早く達してしまわないように緩やかに探るようにして掻き回してやる。三科の声はそのうち啜り泣くように震えてしまって、身体は苦痛と快楽に屈服していたが、無理に縋り付いている理性がまだそれを許していない様子で強請る言葉は口にしない。

「腕揺すらせて…触って欲しいんじゃ、ねぇのかよ。テメェの…スゲェ、充血してんぜ…ッ」
「…んぅ…う…、      …、…ッ」

 髪を振り乱して理性に縋ると、三科は薄く目を開いて睨みつけてきた。濡れているとはよく言ったもので、涙のせいなのかきつい閃光はゆらゆらとボヤける膜に消されていた。

 しかしジッと睨みつけてくる瞳は、まるで自分の中まで覗き込むかのようで、我慢出来ないのはお前だろ、と言われている気がした。それがその通りだからこそ腹立たしい。主導権を握っているとはいえ、初めての挿入で余裕でいられるわけがない。

 強請るまでこのままだからな、と言い捨てるとこっちも必死に射精感を抑えながら中を犯した。

 全部グチャグチャに汚れさせて求めさせてやる。この細い腰だって疲労骨折させるぐらい酷使してやる。それで出すときはコイツの全身にブチ撒けてそれを写メで撮ってやる。両手両足は許してやってもいいかもしれない、代わりに奴隷同然にしてやる。



「内臓突かれて、喜んでんのな…へへ、でも、っ、イけねぇんだろーが…ッ、あァ?」
「…あ…あ…ぅん゛ッ、っああ…杉、本ぉ…ッ」
「…っほら、言えよ…辛ぇんだろ」
「っ      …、………テ、メェ…は…どう、なんだ…よッ!」
「ッ、う゛っ!?」

 追い詰めることに夢中になっていると、突如三科の締まった両足が自分に強く絡み付いてきた。肌がグッと密着したのと同時に三科の中が思い切り締まり、突き入れていた熱の塊は周りの壁に少しの隙間も無く喰い千切るように締め上げられ、思わず背が反った。

 その瞬間、腰が震えて射精する予感も感じられないまま欲が独りでに吐き出された。急な絶頂感で一気に力が抜けたところを、今度は絡み付いていた足に思い切り胸を蹴られて吹っ飛ばされる。ズルゥッと性器が引きずり出された感覚に浸る暇も無く、床に叩きつけられ、蹴られた胸に肺を痛めて激しく咽せた。

 ようやく呼吸がマトモに出来るようになったと思ったら、今度は鳩尾にとんでもない衝撃を受けた。あまりの痛みに蹲っているところに、何か探る感触があった。

 その次にはピローンだの妙に高い機械音が鳴った。苦痛に顔を顰めながらも音の方向を見ると、自分の携帯で自分を撮っている三科が立っていた。まだ頬を上気させてシャンとは立てていないが見下ろされている。いやそれよりも何故か手が自由になっている。驚愕してよく見ると、携帯を持っていない方の手には自分が散々チラつかせていた小型のナイフが握られていた。あのまま行為に夢中になって適当に床に転がしてしまっていたのだ。

 口が開いたまま三科を見上げる。身体中暴行の痕が痛々しく残されていて、ナイフを握っている手は縛った紐と同じく自分を傷付けたようで裂けた痕が何本も走っていた。後孔からは血と精液が交わりながら太腿を伝っていた。ある意味、喘がして見下ろしていた姿よりも衝撃的だった。

「…やっと油断しやがったな」

 そう言われると同時に今度はナイフの柄を持ったままの拳で頭を殴られる。脳が揺れて視界をぶらしているところに怒気が含まれた声が降ってくる。

「アイツ等の居場所教えろ。今すぐ!すぐに言わねぇとこの画像をテメェの履歴に載ってる奴等に送んぞ」

 手下とは悲しいものかな、右手にトラウマ、左手に凶器、正面には悪魔さえ恐怖する顔が揃ってしまえば、簡単に白状してしまうものなのだ。

「…本当だろーな。まぁ、ナイフは没収。携帯はアイツ等の無事が確認できるまで確保。本当だったら画像も消しといてやらぁ…俺はテメェと違って脅すのは嫌いだから、よ…ッ」

 二度目の悪夢。未だ微かに熱がくすぶっている分身を思い切り踏みつけられた。今度こそ悶絶どころか気を失いかけた。悶えている間、バサバサと布のような音がした。そして布が擦れる音が止むと死にかけている自分の上からまた声が降ってきた。

「とにかくテメェの言い分は知らねぇが、散々甚振ってくれた分でチャラにさせてもらうぜ。…あと、今度またアイツ等に何かしてみろ。踏みつけたソレ、一生使えねぇようにするからなァ…!」

 死刑宣告と同等な台詞を吐くと、足を引きずるように三科は出て行ってしまった。もちろん追いかけるとかまた復讐するとか呪いの言葉を吐くとかの余裕は今は一切無く、耐え難い苦痛に呻くことしか出来なかった。




 こうして、復讐したくても出来ない状況に陥ってしまったために『JOKER様』に頼るハメになってしまった挙句、妙な怪物にされて三科に助けられたなんて間抜けをしたのはまた別の話だ。

 ついでにこの日からのオカズは血塗れた三科栄吉に不本意ながらもなってしまったのは言うまでもない。




fin.

2008/02/29

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