PERSONA3 UNDER TEXT

小学生という特権


 コンコン、と軽く、それでも少し躊躇いがちに幼い手が扉をノックした。

 あどけない顔に、歪んだ思考を抱きながら。



「うぃー…、…おっ!天田少年じゃん。めっずらしー」

 目線の少し下に現れた珍しい来客に順平は多少驚きつつも、どことなく憂鬱気な雰囲気に、どうした?と優しく聞いた。

「あの…相談したいことがあるんです。…こんなこと、順平さんにしか頼めなくて…」

 いつもと違い子供っぽさを隠さずに恥ずかしそうに話す。その眼はまるで弟が兄に頼るようで、それが順平の無駄に発揮される慈愛の心に突き刺さった。

「オレにしか…?お、おお!入れよ。なんでも聞いてやるよ」

 自分だけがお兄さんぶっていた順平だが初めて天田に頼られたことで思わず顔が綻び、歓迎しながら部屋に招き入れる。

「ありがとうございます…順平さん」

 そう言って頭を下げた少年の顔が一瞬恐ろしくニヤついたのを順平は見ることが出来なかった。




「ほい、缶ジュースしかねぇけど」
「あ、すいません」
「で?どうしたんだよ?」
「あのぅ…そのぉ…」

 天田の眼はいつもの愁いを帯びた眼でもなく、強気な眼でもなく、順平の知らない眼が困ったように揺らめいて、缶ジュースをもじもじと弄っていた。

 こう、つんけんせずに子供らしくしてれば、それなりに可愛げがあんのになぁ、そう思いながら順平は目線を合わせるように顔を覗きこんだ。

「らしくねぇなぁ。ほら、何でも聞いてやるから言ってみろよ」
「…何でも聞いてくれるんですか…?」
「おう、オレが知ってることなら教えてやるからさぁ」
「…あの…順平さん…っ、      わわっ!?」
「おわっ!?」

 興奮したように身を乗り出して順平に寄ろうとした天田の手の中の缶が滑り落ちて、ジュースが大量に零れた。もちろんかかる力から当然勢いよく乗り出した先の順平の上着にかかってしまう。

「ああ!!すいません…何やってるんだ僕…」
「いーっていーって、大丈夫だってこんぐらい。気にすんなよ」

 なんという古典的な展開。それでも天田の意図していることなど知らない、いや理解出来るはずもない順平にはただの子供の失敗にしか捉えられなかった。

 気分の良い順平は寛大な対応で笑顔を見せ、ドレスシャツを脱いで代わりの上着を取ろうとした。しかし、その手が上着に届く前に天田の小さい手に掴まれる。

「…順平さん意外と綺麗な身体ですね」
「あ?」
「タルタロスで討伐してるとはいえ、あんなに暴食して怠惰な生活してるのに…、その割に細い身体なのに筋肉がちゃんとついてるっていうか…」
「そうかァ?筋肉なら真田サンの方がデコボコついてっぞー」
「運動量が違うし…大体あれはプロテインですもん。半分反則ですよ。…あ、でも何で知ってるんですか?」
「っえ…!?…な、何が…?」
「真田さんの裸」
「や…その、ボクシングの試合…とか。あ…いや、つか!海行ったし風呂入ったし!」

 突然不自然な程慌てだした順平は、頭を捻りながら思いついたように必死に天田に説明しだした。天田といえば、それを少し目を細めて見つめながら未だ身体を値踏みするかのように見つめていた。掴んだ腕もそのままである。


「ふぅん…、…ねぇ、触ってもいいですか?」
「あ?筋肉を?」

 はい、と可愛らしい顔で笑顔を見せながら頷けば、特に拒否する理由も見つからない順平はつられるようにコクンと頷いた。

「別に…いいけど。普通だぜ?」
「どうも。…、わー…胸にも筋肉がついてる」

 純粋に新しいものに触れるかのような口ぶりをしつつ、天田はサワサワと胸の飾りを意識しながら触る。しばらく撫で続けると大人しくしていた順平に僅かに異変が現れてきた。

「天田…くすぐってぇんだけど…」

 実のところそうではなく…銀髪の飼い主に躾られた身体は無邪気に触る天田の手にも反応してしまっているわけで。 突起が勃ってしまう前に、身体を離そうとするものの、ニコリと笑顔を向けられて引っ付かれてこられては、無理に引き剥がすのも何だか忍びなくて…結局のところ無抵抗状態のまま気だけが焦ってしまっている。

「胸の筋肉ってなかなかつかないんですよねー。腹筋なら簡単につく気がするんですけど…」
「…、ちょ…くすぐってぇって…!」

 わざと突起に爪を引っ掻けると、さすがに順平が先程より声を張る。その顔と声は決してただ擽ったいようには見えず、天田はほくそ笑んだ。

「ああ…すいません。…あ、足の筋肉もついてますか?」
「…ん、足?」
「陸上選手とか競輪選手とかついてるじゃないですか?太股にがっしり。順平さんもついてます?」
「まぁ…そりゃ中坊の頃は野球やってたし、ちっとはついてんじゃねぇの?」
「ホントですか?僕、どうやってもつるつるで…太股に筋肉つけてみたいんですよー」

 そう言ってごく自然に今度は太股に手を伸ばした。

 しまったと、順平がそう思ったときにはもう遅く、付け根から膝まで太股を掴んだり撫でたりするその手は、先程のこともあってもう厭らしいものに感じて仕方なかった。天田は純粋に触っているのに…と汚れた考えを持つ自分に嫌気を覚えることで、さらにまた小さく震えが起こってしまうのだからどうしようもない。

「あ、天田…っ、話…!話って何、だよ…ッ?」
「ああ、そうでした」

 思い出したように意外にもすんなり手を離した天田に順平は心底ほっとした。

 …この時は。




「実は…僕、病気かもしれないんです…」
「えっ…病気?」
「…はい…僕特有のものかもしれない…でもこんなこと他の人に確かめられなくて…、順平さん協力してくれますか…?」

 本当に困っているように瞳を震わせて、心細そうに見上げた。

 元々世話焼きの順平である。もちろんそんな風に頼まれて断るわけもなく、真剣な表情で力強く頷いた。

「当たり前だろ。オレに出来ることなら何でもしてやるって」
「あ…ありがとうございます…!、……じゃあ、ズボンと下着脱いでもらえませんか?」
「…は、…え!?ズボン…とパンツも…脱ぐの?」
「はい。下半身の悩みなんです。お願いします」

 さすがに唐突に下を全部脱げと言われて順平は困惑するが、男同士だし、減るもんじゃねぇし、トイレとかじゃ普通に見せるし、相手は小学生だし、頼られてっし…などと自分の中で納得するとベルトを外し、スラックスを下着と一緒に下ろした。

「…これでいいか?」
「ありがとうございます」

 多少気まずそうにしている順平とは違い、天田は満足そうに口元を少し吊り上げると、先程と同様に確かめるような手つきで躊躇することなく順平の性器に触れた。

「ちょ…!?おいっ、バカっ…触んなって…ッ!!」

 まさか小学生に股間を握りこまれる日がくるなんて思いもよらなかった順平は過剰に反応して押し退けようとしたが、さらに天田が強く握るものだから身体が勝手に強張って肩に手をそえるだけになってしまった。当の天田は儚げな顔はどこへやら、むしろ隠しきれてない楽しさが見えるようだった。

「ここを触るとゾクゾクって変な感じしません?僕そうなるんです。何でですか?病気ですか?」
「なっ何でって…!と、とにかく一旦止めろよ…!」

 尋ねられながら上下に擦られて、さすがに息が詰まる。大体何でと訊かれてどう答えればいいのか。手淫されりゃ感じて勃つだろ、なんて直接表現はさすがに小学生には言えない。

「協力してくれるって言ったじゃないですか。……あれ?何か硬くなって…大きくなってきましたよ?どうしたんですか順平さん?もしかして順平さんの方が重症なのかも…」
      ッ…、くっ…止めろって…、言ってんだろッ」

 勃起させられたら堪らないと、多少、いやかなり焦って天田の手を強く掴んで止めさせると、たちまち天田は目を潤ませて睨むように見上げた。

「ッ…!どうしてですか…、僕はただ病気じゃないかって心配で…知りたくて…すごく悩んで順平さんに頼んだのに…」
「え…やっ…、その…あのな…」

 今にも泣きそうな天田を見て順平は激しく動揺した。順平の性格から人を泣かせて平常ではいられないし、それが普段生意気でも可愛らしい小学生なら尚更だ。

「酷いですよ順平さん…、協力してくれるって言ったのに…ッ」
「わっ…分かったからっ…泣くなよ…、あのな…それは何つーか…皆そうなるもんだから心配することじゃねぇんだよ」
「そうなんですか?…でも、何でなるんですか?」
「え…」

 子供特有の何で?攻撃の連続に順平はただ焦るばかりだった。さすがに面と向かって言うのは気まずくて、恥ずかしさを隠すために顔を俯けた。

 何て言えばいいんだよ…?大人の階段を上る話を自分がしちゃっていいのか?こういうのって自分で勝手に気付いていくもんじゃねぇの。まぁ確かに真田サンに話したら余計面倒なことになってただろうな。…とごちゃごちゃ考えながら柔らかい表現方法を使おうと順平は頭を使いながら言葉を出した。

「そ、そこは…ガキつくるとこってか…大事なところだから敏感になるわけで…こういうのは女とだなァ…」


 そこまで言うと天田は順平の足の隙間に入り込み、ごく自然に腕を掴むと後ろに回した。あまりにもその行為が自然過ぎて、何を戯れているのかと見当違いも甚だしく順平はされるがままになって首を傾げた。

「あ…天田…?何す      

 先程外したベルトで小学生とは思えない慣れた手つきで順平の腕を縛り始めた。

 順平は状況が理解出来ないながらもが驚いて身動ぎしてみたが、一度金具にベルトを通されると焦った頭では中々自力で外せない。余計に順平は混乱していく。

「えっ…えっ?天田…!?」

 当の天田はベルトを簡単に締め上げるとニンマリと悪戯っぽい笑みをたたえて順平と向かい合う。その顔は玩具を与えられた子のように嬉々としているように見えた。

      …それじゃ、よく分からないな。…順平さんの身体で教えてくださいよ。実験台になって下さい、順平さん?」




 いつも通り静かな部屋には、子供の可愛らしい手からは想像出来ないような厭らしい水音と、順平の抑えた喘ぎ声が響いていた。

「…、ぅ…ぁっ…」
「ねぇ、順平さん。ここから溢れてくるこの液体は何なんですか?…ねぇ、言ってくださいよ」
「っ…」
「教えてくれないんですか。ならこれを写メで撮って皆さんに聞こうかな」
「ッ!!…う゛…」
「じゃあ、撮りますね」
「!…っせ…      

 天田がポケットから携帯を取り出そうとしているのを見て思わず順平が叫ぶ。その顔は、唇を悔しそうに歪ませていて、赤くて泣きそうで焦っていて、酷く情けない。

「…はい?」

 悪魔かと錯覚させるほどの微笑みを見せながら、余裕たっぷりで聞き返す。携帯を揺らして早く言えと煽る様に順平は唇を戦慄かせた。

 いっそ全身で体当たりでもして吹っ飛ばしてやろうかと考えたが、尻餅をつかされた状態、俗に言う体操座りに近い姿勢で後ろ手に縛られて足の間に小学生が居座られては、体当たりどころか反動で後ろに転がってしまいそうだった。仕方無しに戦慄く唇から言葉を吐き出した。

「…ッ、……せ、精…液…、だよっ…!」

 最後の方は吐き捨てるように強く言うと、天田は口元を更に吊り上げた。順平が目を伏せると、下からくりくりとした大きな眼で見上げてくる。

「へぇ…それは気持ち良いと垂れ流すんですか?」
「なっ…!」
「だって順平さん…溶けそうなほど気持ち良さそうな顔してるじゃないですか」
「おまっ…、も…いい加減にしろよ…ッ、……お前、分かって…!!」

 小学生に犯されているということに羞恥と屈辱に襲われる。しかも相手はそれを分かってわざとやっているのだ。震えながら睨みつけて言うと、天田はクスクスと小馬鹿にしたように笑った。天田にとって、そうやって顔を真っ赤にして敵意を向ける姿こそ加虐心を煽って、楽しむ要素そのものだった。

「だったらなんですかぁ?小学生に遊ばれてこんなに汚くて厭らしい液を出して…」
「っ違ぇよ…!」
「違う?どんなに頭が悪くてもこの状況は否定出来ないでしょう?…ね、順平さん?」

 すでに反り返り液を流している順平のものをグイっと捻り上げる。同じように反応して身体も反り返る。慣れた身体は悲しいことに快楽の方に刺激を受け取ってしまった。

      ァ!あぁ…ッ、…ツ!?」

 加減を知らないような強い刺激に射精しそうになったが、付け根を痛い程に絞められて欲を抑えられる。訴えるように天田に視線を送るがニコリとしながら首を傾げられる。

「どうしたんですか?」
「はなっ…せよ…!」
「これが何か問題あるんですか?どうして放して欲しいんですか?」
「ばッ…!こんなに…シとい、て…ッ!!」
「分からないです。どうして放して欲しいのか、何をしたいのか、ちゃんと言ってくれないと」
「ッ!!…てっめッ…、ガキのくせに…悪趣味なんだよっ…!      ぅあッ!」

 天田は根元を更に強く絞め上げ、言うように促す。順平は潰されそうな力に、もう射精感よりも痛みの方が強くて眩暈すら起こりそうなほど気分が悪くてかぶりを振った。強く閉じる目には何の涙か微かに濡れていた。

「言わないと…放しませんよ?」

 そう声を低めて言うと順平は顔を真っ赤にして更に首を振った。それが拒否なのか耐え切れなさなのか本人も分からなかったが、到底我慢出来るものではないこれに、暫くは黙っていたがついに恥を捨てて呟く。

「ッ…クソっ…、……い、…イキてぇんだよ…ッ、…」
「…人にものを頼む言い方じゃないですねぇ」
「ッツ!!…っ、…ぅ゛…、……イかせて…くだ、さい…ッ」

 極限状態まで追い込まれた順平は消え入りそうな声で頼む。すると天田は満足そうに目を細めて、解放すると同時に絞めていた根元から一気に擦り上げた。

      うあぁぁ…ッ」

 悲鳴のような声を上げて順平は果てた。腹は精液で汚れてしまったが、それを気にする余裕もなく身体的にも精神的にも疲労した順平はゼェゼェと息を吐きながらグッタリとしたままだった。



 少しの間順平の痴態をそのまま眺めていた天田は、そっと順平の耳元に口を寄せた。

「…大声出すと周りに聞こえちゃいますよ…?真田さんとか、ね…?」

 意地悪く言うと目を瞑っていた順平はハッと見開き天田を凝視した。

「お前…知って…」
「知っていましたよ?…2人がどんな行為を…どんな厭らしくて下種な行為をしていたのかをね」
「ッ…、…」
「保健の教科書に書いてありましたよ。普通男女でやるんですよね?そういうの。…男の精子が女の卵巣に入って受精する…これは立派な生殖行為だ。生物が子孫を絶やさないために行う本能の行為…」

 淡々と嫌味に聞こえるように順平を見据えて天田は話し続ける。射るような視線に耐え切れず目を逸らすも小さな手がそれを許さない。

「男と女だから許された行為なんですよ…それを男同士で。快楽を得られれば男同士でもいいんですか」
「ッ違ぇよ…オレと真田サンは…そんなんでいるわけじゃ…、…ぁ!?」

 反論する順平の鎖骨に唇を当て強く吸う。順平は嫌がり身体を小さく振るが太股の付け根を押さえられ、手を後ろに縛られているために無駄に終わる。

「…まさか、愛し合ってるとでも言いたいんですか?アハハ…余計におぞましいですよ…、…――んっ、…キスマークってうまくつかないもんだなぁ…」

 感情が死んだような顔と声、そして行動に順平は恐怖を覚える。この小さな手はこれ程までに重かっただろうか、この小さな唇はこれ程までに冷たい声を出せたのか、これ程までに凶悪だったろうか。どんなに自問自答したところで天田の複雑な心が読み取れるはずも無い。

「男同士は日本じゃ結婚できないし…第一どちらかに彼女でも出来れば簡単になくなりますよ、そんなモノなんて」
「…っい゛、っつ…」

 語尾と共に天田は順平の肩に食いついて、歯形をくっきりと残しては、赤くへこんだそこを愛撫するかのように優しく舐めた。何度も何度も順平が肉を食い千切られるんじゃないかと恐れるほどに繰り返して、血が今にも噴き出しそうに真っ赤に腫れあがると、ようやく満足気な顔をして唇を離した。

「吸引じゃあ上手く出来ないから…今はこれでいいかな。…あーあ、きっと痕が醜いですよ。可哀想。真田さんが見たら驚いちゃいますね」
「…っ、…は」

 後半は嫌味と同じ棒読みでにっこりする天田に対して、やっと噛み付きから解放された順平は、強張った身体を弛緩させ、痛みに耐え、声を上げないよう食い縛って詰めていた息を吐いた。

 ジンジンと鈍痛が残る肩に顔を顰めながら怒気を込めて睨みつけようと顔を上げようとすると、いきなり強い力で肩を掴まれて乱暴にうつ伏せに押し倒される。順平にはもう訳が分からなかった。ただ倒されたときに顎を強打して軽く脳震盪を起こしてしまい、抗うことすら出来なかった。



 天田は順平の意識が混濁しているうちに太腿に引っ掛かっているスラックスを更に膝まで下げ、背中から尾てい骨までをつるりと撫でた。順平の身体がピクンと反応するのを嘲笑いながら、腰を自分の方へと引き寄せる。

 ふぅ、と一息入れてから脱ぎ捨てられていた順平のシャツを掴むと、それを自分の指に纏わせて手袋代わりにした。そうして出来上がった紫の手で、順平の尻を適当に弄んでから、秘所に親指を宛てると勢いよく突き入れた。

「ッひ…!?ィ…あ…、天      

 突然の痛烈にグッタリしていた背がしなり、虚ろだった眼が見開かれた。慌てたように振り返ったものの、縛られた後ろ手のせいで腕を攣りかけて再度肩を床に付けることになった。

「ココに挿れるんですよね…男同士って?」
「ッンン…!や、やめろ…!いい加減にしろって…!!」

 指を挿し込んで動かしながら天田は問いかけた。わざわざ順平の意識を覚醒させてから意地悪く聞くあたり、真性のサディストである。

 小さな指とはいえ、乱暴な指使いに身体の中を犯されて、身悶えたいのに、逃げ出したいのに今の体勢ではどうすることも出来ない。ただただ順平は首だけを必死に天田に向け、壁を通さないように止めろと小さく叫ぶ他ない。

「心配しなくても僕のモノをココに挿入したりしませんよ…汚らわしい」

 天田は指を引き抜くと、部屋をぐるりと見渡した。散らかった部屋に埋もれるように置いてあった鞄に目を付けて、中を物色すると飾り気の無い筆箱を手に取った。そして数本のシャープペンシルや色ペンを取り出して順平に見せつける。

「ね、順平さん。…これが何本入るか実験してみましょうか?」
「なっ…!?ふざけんな…ッ!!」
「じゃあ、まずは1本目〜」
「やめっ…!      んあぁぁ…っ!!」




「あ、順平くん。天田くんが探してたよ?」
「ッ!!…クソ…またかよ…」

 あの後、実験と称されて散々虐められて、されるがままの恥ずかしい姿を携帯に保存されたせいで、天田の半奴隷と化してしまっていた。

 もちろん周りの人間がそんなことになっているなど気付くはずもなく、風花などは微笑ましそうに顔を綻ばせた。

「2人って最近仲いいよね。順平くん、よく天田くんの言うこと聞いてあげてるみたいだし…ふふ、兄弟みたい」
「…、や…風花が思ってるような…もんじゃねぇから…、行ってくるわ…」

 項垂れた後姿に風花は少し首を傾げながらも、やはり優しい笑みで見送った。



 毎昼毎夜、天田は順平を呼びつけては何かと命令し、暇が出来れば汚い気持ち悪いと罵りながら身体を甚振るということを繰り返すのだ。携帯を壊そうと順平が躍起になっても天田はデータを他に移動させて脅し続けた。

 順平も写真がどう以前に天田を折檻するなり何なり強行手段を使えばいいものを、こんな理不尽な目に遭わされていながらも、どうにも暴力をふるうということが出来なかった。性格や自分の境遇もあるが、何より天田自身が決して本気で蔑んでいるようには見えなかったのである。寧ろ、行為は天田なりの甘えなのではないかと思うほどに楽しそうに擦り寄ってくるのだ。


 しかしもちろん毎日のように天田が順平を所有していては、飼い主であった真田が怪訝に思わないはずは無い。それどころか天田の行為によって残された痕は真田の少し高い目線からなら服の隙間から見えてしまう。

 真田が思い切って訊けば、虫のせいだ、怪我だと逃げる順平に、さらにその順平に引っ付くように擦り寄り、黒さを含んだ笑みで同意する天田。鈍感な部類に入る真田でも、やはりこれには納得がいっていなかった。それでも小学生に嫉妬するというのも馬鹿げた話で、これ以上会話が展開することはなかった。

 暫くは3人の周りのみ不穏な空気が流れつつも、平行のままという奇妙な生活が続くことになる。




fin.

2006/11/05
2008/10/23 タイトル・文章修正

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