PERSONA3 UNDER TEXT

clumsyA


 自分は疚しいことなんて何一つやっていなかったし、そもそもは真田サンの発言が大問題で、それを何とかしようと頑張っただけで…

 何で自分がこんな目に遭わないといけないんだということだけが、何度も何度もぐるぐると頭を廻っている。



 影時間の暗闇の中、小さめの窓からこの時間独特の濃い月の光だけが差し込んで、見たくないところばかり照らし出す。極度に緊張した頭と身体で見上げるオレに、真田サンは酷く冷えた微笑を湛えながら、先を外してノズルだけになったシャワーを近付ける。

 待って、とか、やめて、とか常識的な言葉は聞いてもらえないんだろう。そもそも普段から聞いてくれてない。

 いつだって…オレの意見は無視される。

「真田サン…!!マジ…かよ…ッ、      っうぁ…あ゛あ゛ッッ」

 硬い、痛い、キツイ。ノズルを無理やり押し込められる。縛られて自由に出来ない身体を陸に上がった魚のように暴れさせても、どんどん腹の中へと埋められていく。

「無、理…ッ、何考えっ…て…!」
「無理?こんなもの小さいだろ?お前を満たすのには」

 ちょっと暴れただけでは抜けないように奥まで挿し込んだところでようやく離れた。さっきまで弄られて熱くなっていた後孔は異物で圧迫感しか感じられない。

「…さ、そろそろ行かないとな」

 そう呟くと、ゆっくりと真田サンの手が蛇口に伸びた。蛇口に触れる行為は一つしか思い当たらなくて、咄嗟に制止しようと僅かに身体を起こした時だった。

「ッ!!うそ…や、やめっ      ッッ!!」

 蛇口を捻るキュ、という音と共に大量のお湯が腹に流しこまれた。止まることの無い勢いの強い湯が排出器官を逆流し、壁を縦横無尽に押し拡げて刺激し続けて、ゾクゾクとする感覚に苦痛が混じってくる。

「うぅ…ッ、はっぁっ…さ、真っ田…ッサ…、…あ…ッ」
「あまり大声を出さない方がいいんじゃないか?まぁ、その姿を誰かに見られたいなら話しは別だがな」

 酷な笑みを浮かべると、踵を返してさっさと風呂場から出て行かれる。

「待…ッくっ…!」

 呼び止めることも叶わずに、腹に侵入してくる湯に歯を食い縛る。ただでさえバスタブが一人分大程の大きさしかなくて暴れられないのに、手も足も血が止まるっていうぐらいに縛られてるからどうしようも出来ない。どんな縛り方をしてるのか知らないけど、解こうとすればするほど、どんどん食い込んでくる。

 元は真田サンが悪いと思って呪ったところでこの状況には何の変化もない。荒く息を吐き出して、刺激に耐えるように息を飲むことを繰り返し続ける。視界に入る長く伸びるノズルが自分と結合してると考えるだけで気分が悪い。

「…ン、…ッ、くッァッ…」

 もうダメだ、我慢できない、そう限界を訴えても、止める術がないから延々と湯は中を犯し続ける。快楽も微かにあることはあるけど、苦痛の方が圧倒的に上でジリジリとした感覚に、湯に侵入された腸は不自然に膨らんでグルグルと鳴り始め激痛を訴え始める。

 真田サン、真田サン、真田サン、助けて、助けて、そう呼ぶ声も虚しく箱の中で木霊するだけで、知らないうちに頬を濡らしていた。

 …ヤベ…オレちょっと痙攣、してね?そう思う頃にはノズルや、拡げられた壁の感覚も無くて、ただ酷い腹痛だけだった。それでも何故か、自分自身は反応していて快楽も感じ取れないのに液なのか湯なのか分からないけど濡れていた。

 苦しい…オレだって何も思ってないまま、ただヤられてたんじゃねぇんだよ…ッ、腹が立つのは当たり前じゃんかっ…、そう強く思うのに、反面ただ、早く帰ってきて欲しいと願う。帰ってきたらそれはそれで危ないのは分かるけど、今は早くこの状態を何とかして欲しい。…いや、それよりも誤解を解きたい。真田サンの熱が心が、欲しい。




「う…、…っ…」

 殆ど意識が無くなってから、どれ程時間が経ったのか分からないけど、カチカチ、と数回光ってから風呂場の電気が灯りを取り戻した。

 ああ影時間が終わった…やっと、やっと帰ってくる。

 大嫌いで、愛しいあの人が。

 そこからは、もう早く早くと機械のようにそれだけを呟いていた。意識を取り戻すと同時に痛みも戻ってくる。腹が裂けそうな圧に成す術もなく、泣きながら戻ってくるのを待った。



 多分、それからは時間があまり経っていないと思う。ガラ、という音と共に、待ちわびた、いや待ちわびさせられた人物が入ってきた。

「…あ、…さ…っは、…こ、れぇ…、…ッ」

 話すこともまともに出来なくなっていて、息をしっかり出すのも苦しい。それでもハクハクと口を動かしながら必死に訴えるが、相変わらず冷たい眼をしている真田サンは傍に寄って見下ろしているだけだ。

「さ、…ふッ…、う゛…ッ」

 徐々に瞼まで痙攣してきて、また意識が飛びそうになる。それなのに別物になってしまったような身体は何故か熱くて堪らない。

 見下ろしていただけだった真田サンがようやく腰を屈めて、ノズルを手にする。抜いて早く抜いて、と思うだけだったが、これを抜かれれば      と思い至った。今、これを抜かれれば、限界まできているものが押し戻されるんじゃないか、と。

 濁った頭でも生理的な拒否反応が起こる、こんなところで漏らすなんて絶対嫌だ。

「や…だ、お願…、ァ、はぁ、あ゛あぁ゛ぁ゛…ッッ」

 弱々しい制止も空しく、バスタブの中で転がっているオレを覗き込んで、突っ込まれている物を荒く抜き取られた。

      ッ」

 栓になっていたものを急に引き抜かれるのと同時に、腸を刺激され続けて溜まっていたものが、ズルリと流れ出ていく感覚に打ち震えた。一種の壮絶な快感だったかもしれないのも束の間で、ビクビクと身体を大きく痙攣させてそのまま意識を吹っ飛ばした。




「…、…」

 痛い…重い…熱い…目が回る…、なんだ、どうなって…、此処は…

「…ッ!?さ、真田サン…ッ」

 目を開くと真田サンが自分の上に乗っかってて、胸にチリ、と痛みが走った。何?何やって…え?ちょ、これ犯られてる!?

「待っ…ッちょ、ふざ、けんな…ッ」

 やっと意識が回復して追いついてきて、状況を把握する。手足はもう縛られていない…みたいだ。ここはオレの部屋で…何かかなり荒らされてんな…いや、元から大分汚かったけどクローゼットの中まで漁ってる形跡がある。八つ当たり的なものなのか…?

「…ッ!んぅ…」

 今度は骨盤辺りに刺激がきて身体が跳ねた。確認を真田サンに移すと、どうやらオレの身体中吸ってるようで、痕を大量に付けられてる。その光景を見て物凄く怒りを覚えた。繋げるために、洗浄的なことはしたことがある。でも俗に言う浣腸、それも無理矢理気絶するぐらいの度が過ぎたことは経験したことがなくて、漏らすという行為は酷く屈辱的だった。

 勝手に勘違いして、あんな苦しいことして、死ぬほど恥ずかしい形で気絶させといてっ…しかも気絶してる人間を犯してるとかマジありえねぇ…ッ

「真田サン…ッ!!いい加減にしっ…ッ、…う…離れろよっ…!も…ッ、嫌だぁ…ッ」

 余りな事をされたショックと、この状況と、虚しさとで、泣いてしまった。マジでダセぇ…何してんだよオレ…

「…順平」

 真田サンが顔を上げて寄せてきて、背けるオレの頬に手を当てる。

「離れろっつってんだろ…ッ分かってくんねぇなら、もう、いい…ッ」

 その手を払い除けるように身体を暴れさせると、鍛えられた腕で押さえ込まれてベッドに沈まされる。きっと軽く重圧をかけているだけなんだろうけど、今の弱った身体じゃ全く押し返すことが出来ない。

「っ…、まだ…何かする気かよ…ッ」
「……全く、本当に馬鹿だなお前は」
「なっ…、…?」

 真田サンの言葉に顔を正面に戻してみると、見つめる眼がさっきと全然違うことに気付いた。何ていうか、優しくなってる…というか。

「見たぞ。美味そうなものを随分と沢山買い込んだんだな」
「え…、あ?」
「アイス」

 言われてああ、と納得した。まぁ、これだけ部屋を荒されてたら、さすがに買い込んだ練習用の食べ物も見つけられるか。それでも散々な目に遭った後じゃ今更過ぎる。

「あれで、練習してたのか?」
「…っだから何回も言ったじゃないスかッ…、違ぇって、オレ…!!」
「そうだったか?」

 大して記憶を辿ろうともせずに簡単に言われる。…ンの野郎ぉ…ッマジでムカつく!!激怒して身体を震わせても、真田サンはより目尻を緩ませる。相変わらず脳内が全く理解出来ない。

「どうして…そんな練習したんだ?」
「どうしてって…真田サンがオレの…、…その、フェ、フェラ…を…っ下手とか言うから…ッ!!」
「…ああ、そんなことを気にしてたのか」

 今度はそれなりに記憶を辿るように首を傾げて、思い出したように軽く頷くと、くだらない事の様に言い放たれた。でもこっちにとっては大問題だ。きっとオレが下手扱いしたら物凄く機嫌が悪くなるに違いないくせに。

「そんなこと!?オレ、かなりショックだったし、ムカついて…!」
「そうか…だから…なるほどな…」

 緩めた目をさらに細めて、納得したような声を出しながら首に顔を埋められる。喋る度に唇が、息が薄い首の皮膚に触れてくすぐったい。

「俺は我慢してたんだぞ…?お前があの朝、急に激怒したから、毎日されるのが嫌なのかと思ってな」

 ああ、それで帰ってきたときに不自然なくらい、無愛想だったのか。抑えるために極力無視してたのかよ?…反省の仕方間違ってるだろ、絶対…

「下手とは言ったが…俺は下手くそなお前が一生懸命にやっている姿が好きだったのに、全く余計なことを…、徐々に俺好みに教えてやろうと思っていたのに…チッ」
「舌打ち!?つか、ンなこと知んねぇっスよ!!オレだって、その…自分の意思でやってんのに…」

 口に出すうちに言っている自分自身が情けなく恥ずかしくなってきて、伏し目がちにそう言うと、真田サンは首に埋めていた頭を上げて顔を覗かれた。それから、口角が微妙に吊り上った。

 目の錯覚、いやそうだと信じたい。微笑んだとかいうものじゃなく、冷笑といえるようだったものなんて、信じたくない。

「…だが、勘違いでも俺を傷付けたのは事実だ。罰は受けてもらわないとな」
「……は?」

 …え、何…罰?

「……今…罰とか、言いました?」
「ああ」
「…ッッアンタ頭可笑しいんじゃねぇのッ!?オレっ…オレあんな目に遭わされたんスよッ!!お釣りがくるぐらいだっつーのッッ」

 オレ、後ろからも出すとかホント…そんなプレイ望んでねーし!気絶するとかありえねーし!そもそも勘違いされて強制的に浣腸されて犯されて…その上罰とか…、同じ文化で生きてきたとは思えねぇ…

「何言ってる…今日だけは…許さないことにした。俺の好きなようにヤらせてもらう。安心しろ、さっきよりは多分抑えられると思う」

 唇に触れるだけの軽いキスをされると、身体を起こしてオレに背を向けたまま何かゴソゴソとしている。

 オイ…オイオイ…何する気なんだよ、勝手にも程があんだろ!もうこんな関係になった時点で終わってると思うけど!もう色んな意味で運全部尽きちゃってるけど!

 肩が、背中がゾクゾクする感覚がして、身体中吸われて痛いのも、中がまだ何となく気持ち悪いのも我慢して、服を着る時間もカットして、シーツを巻きつけながら引っ張って逃げ出そうと立ち上がったら、背を向けていたはずの真田サンに首根っこを掴まれて力任せにベッドに戻された。

「逃げるなよ。良いものをやるから」

 そう言って女のコなら一発で落とせそうな笑顔を見せながら、手に持った何かを軽く振られる。目に入ったものに生まれて初めて人的被害を察知した。

「…ッ!!それっ…ど、どうすっ      
「ずっと俺のだと思って咥えていたモノ…こっちにも咥えさせてやるよ」

 自分用のプチ冷蔵庫一杯に詰めていた、練習用の友。原色の赤や青や黄色の色鮮やかなアイスキャンディを持って笑う真田サンはガキみてぇに楽しそうだった。




to be continued.

2006/12/26

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