GameB
ゲーム…3日目。
何も感じない、価値がない…、自分が楽しむための…遊び。
今なんて、同じ土俵にすら立ってない…何か違うアクションを起こさないと駄目だ。今の状況から1秒でも早く出たい。
「鍵、かけていないのか」
「……」
当然のように人の部屋に勝手に入ってくる真田サンだけど、そっちには視線を移さないでベッドに仰向けになったまま転がっていることにした。下手に動くと殴られる可能性が高いし、何かが変わってくれることを願って行動に変化を出すことにした。
「?…今日は随分と大人しいな」
「……」
ギシ、とスプリングが軋んだ。ゆっくりとした動きで顔の横に手をついて体重を乗せた。表情を確認するように覗き込んできて顔を寄せられる。目線が合ったその顔は眉がぐっと寄っていて、少し不機嫌そうだ。
「……」
「…何企んでる」
「……」
「気に食わないな…その態度」
「……」
「フン…」
反応がないのに焦れたのか、性急に唇に吸い付かれた。気分悪さにそれでも抵抗しない。受け入れると逆に離れた。
「っ…、そんなもの、か…?」
「…?」
何故か驚いたような、ショックを受けたような顔をされた。これは効果有りか、そう無表情を保ちつつ内心ちょっと嬉しかった。こんなことで喜んでいる自分の精神状態がかなり危ないとは思うけど。
真田サンはジッと顔を見つめてきた。気に食わないというよりは、こうであってはいけないような、そんな感じの顔付きで数秒睨みつけられる。それから急に見下したように顎を上げて冷めた表情に変わった。…この顔は、嫌だ。
「…ハっ…どんなに飾ったって…隠せない」
言うのと同時に舌で首をべったりと舐め上げられた。思わず肩を竦めるも、別の生き物の様に器用に首を滑り伝って…胸を腹を中心に迫るように焦らすように噛み付かれていく。
…拙い。とてもじゃないけど我慢なんて、無理。この男の動揺を誘うには、逆にもっと積極的にいった方がいいんだろうか。手を伸ばすぐらいした方がいいんだろうか。だけど、それこそ無理だ。そんなことしたことがない、どうやればいいのか分からない。それに、…
せめて無反応を保とうと、歯を食い縛って必死に耐えてみる。触られる感覚を極力意識しないようにしてみるも、結局皮膚が勝手に刺激を拾ってしまい、シーツを強く握り締めて無意識に拒絶して首を横に振ってしまった。その様を見て、喉を鳴らして笑われる。
「ほら、な。何を企んでたのかは知らないが…無駄だと分かっただろ」
「…っっ!い゛っ…、やっ…あ゛…っ」
内股の付け根を噛み付かれて痛烈と共に、刺激が中心にビリビリと伝わる。我慢しきれなくなって食いしばった歯の隙間から空気が漏れて、それでも我慢出来なくて、声を上げてしまった。
…最悪だ。せっかく我慢し続けたのに、意味がなくなる…抜け出すチャンスが消えてしまう。
「っ…さっ真田サン…よくして…ほしい…っス、…痛く、しないで…」
「 !」
反吐が出るような台詞が思わず口から吐き出された。さっきまで手を伸ばすことさえ躊躇ったのに、追い詰められた身は簡単に口にした。
もしかしたら本音なのかもしれない、そう一瞬思って狼狽した。こんな目に遭って思考まで潰されたのかもしれない。
「…真田サン…オレ…」
「お前…いい加減にしろ」
「オレとヤりてぇから…欲しい、から…毎日…」
「…いつまで、くだらない芝居をするつもりだ」
「…芝居って…」
「それに、言ったはずだ。お前はいらないんだ。いるのは…お前を欲した奴だ…」
「オレ、を…?分かん、ないっスよ…だったら最初から…」
「分かってもらうつもりなんて、ない」
本当にハナからオレになんて興味ねぇんだ。オレを欲しがった奴?誰だよ、意味分かんねぇよ。
脱力する。力抜いて目を閉じた。手を伸ばしても伸ばしても払われる。もう掴めない…もう…
「またか…そんな態度をとっても同じだと言ってるだろ」
「殴られんのは懲り懲り…嫌がったって、やめてくれねぇんでしょ」
「……」
「もう、痛いのは嫌だ…、もう…嫌だ…」
腕を目に押し付けた。こんな理不尽なこと、もう嫌だ、何も見たくない、聞きたくない。
覆った腕を無理やり外されて手前に引っ張られた。合ってしまった眼は、逆に逸らされて、掴んだ腕を跳ねのけられてその勢いで再びベッドに沈んだ。
「…俺はお前にただ快楽を与えたいわけじゃない。大体お前は慣れてないせいで締まってるんだ。どう扱っても痛むのは仕方ないだろ」
「そん…っ」
「そんなに嫌なら…上手く奉仕すれば考えてやってもいい」
身体を無理やり起こされてベッドの下にしゃがむように指示をされる。男のモノを咥える…考えられない。何で自分がそんな奉仕なんてしなければいけないのか。どうしても吹っ切れなくて視線を泳がしてたら、突き落とすようにしゃがまされて、耳元で痛めつけるぞ、と低く囁かれた。
「…ンで…こんな…、っそれに…したことねぇし…」
「知識ぐらいは持ってるだろ」
「や…やり方までは…、だってそんなの…」
「いいから咥えろ。思いつく限りの奉仕をすればいいんだ、…ああ、分かってるとは思うが、もし歯を立てるような真似をしたら…2度と歩けなくなると思え」
「っ…」
「ほら、さっさと口を開けろ」
「っ!?…う゛ !!」
口に手を突っ込まれて、顎が軋むほどに無理やり開けさせられる。壊される恐怖に仕方なくスラックスの前を寛げてソロソロと嫌々ながら咥えた。また血だらけにされるのは絶対に避けたかった。
それでも気分が良いわけがない。血管が浮き出ていて、感触が悪い上に無理矢理奥まで咥えさせられるせいで陰毛が舌に絡み付いて、上手く舐めることも出来ない。ぐぐっと胃がせり上がってくるのを何とか堪えて、分からないながらも吸ったリ舐めたりと頬張った。屈辱的で虚しくて、気付けば涙を零していた。
「下手だな…下手なりに、もっと考えろ」
「ッぐぅんん゛…っ!?」
膝をつくオレの中心をいきなり踏みつけられて、痛みと刺激に反射的に口が離れる。その頭を掴まれて、また押し付けるように咥えさせられる。
「離すな」
「うっ…、踏む、からっ…んふっ…ッ」
「…っ、…なかなか…いい眺めだな」
そのまま弄ぶ様に足で軽く刺激されながら、掴んだオレの頭を自分で前後に動かし始めた。呼吸を圧迫されて、頭を滅茶苦茶に振られて、そして目の前がスパークするほどの刺激で、気持ち悪いのか何なのか、とにかくもう耐え切れなかった。
何度も何度も繰り返されて、真田サンの喘ぎが耳に入ったときには喉に勢いよく熱いものが吐き出された。
「っ …、…零さず…飲み込め…」
「ッ!?ぐふっ…んっ 、っぐ…!!」
「吐き出すな」
「ぐぅ…っ、ん゛…っは…、かはっ…ごほっ」
「初めてにしては…まぁまぁの出来なんじゃないか」
溢れてくるのを何とか口を押さえて、噎せ返って零しながらも飲み込んだ。
…にっげぇ…っ、喉の奥が火傷したみてぇにアチーし…歯とか口ん中に飲まされたのが絡み付いてマジ気持ち悪ィ…
それでもこれで許してもらえる、やっと解放される…そう思った瞬間、中心に置かれていた足に体重をかけて強く踏みつけられた。ビリっと全身に電気が走ったように痺れた身体を反らせて、足の力を弱められると強張った身体から一気に力が抜けて、そのまま足にもたれ掛かった。悶絶しながらゼエゼエと呼吸をしていると、腕を乱暴に掴まれて、ベッドの上に無理やり引き上げられた。
引き寄せられるまま密着して、気付けばそのまま臀部を押し開かれて、再び硬度を増し始めたそこに座り込まされそうになる。慌てて引き離すように肩を突っぱねるが余計に強く抱きすくめられてしまう。
「ちょっ、や…!!いきなりはっ…!痛くしねぇって!!」
「考えるとは言ったが、ヤらないとは言ってない」
「っつ…」
何度叫べば、何度許しを請えば、何度何度…想えば
「…真田サンの考えてること、全然分かんねぇけど…真田サンもオレのこと…分かって、ねぇ」
「どういう意味だ」
「…、…オレもう、疲れたっス…」
「……」
「ッッ !!う゛…ッツ」
避けるように目線をずらされせた直後に衝撃がきた。捩じ込まれて、噛み付かれて、殴られて、泣かされて 気付いたら朝になってた。
今夜もまた悪夢がくるのだろうか。痛む身体を引き摺りながらのろのろと身体を洗いに部屋を出た。その頃にはもうなんで、と理由を考えることすらなかった。ただ酷く心身共に疲労していた。
「…ァ、いや…も、いや…ぁ…」
その夜、やっぱり酷い目に遭わされて…只管泣き続けた。強く抱きすくめられる手には優しさなんて欠片もなくて、逃がさないとばかりに掴まれた箇所は痣になるほどだった。
強制的に揺すられるボロボロの身体に朦朧とした頭で思う。怖いと感じる。苦しいとも感じる。逃れたいとすら思う。それなのに、嫌いにはなれなかった。いや、嫌いという言葉じゃ言い表し難いけど、とにかく嫌いになって当然のはずなのに、こうまでして求めてくる様に何か痛さと虚しさがあって、複雑に絡まって嫌いというものに結びつかなかった。
今日までずっと抵抗したし、問い詰めた。でも結局何も変わらない。このままじゃ明日も明後日もその次も、ずっと…、この悪夢から抜け出せないと悟った。
痛々しい。自分が可哀想で、真田サンも可哀想に思えた。
だから決めた。
明日も、明日もこうなったら、ケリをつけようと。
5日目。
ゲームはもう、アンタが言うところの…チェックメイトってやつだ。
to be continued. 2007/08/09