Gun Lesson A
死ぬかと思った。つかマジ死ぬだろ頭ブチ抜いたんだぜ?いや弾は出なかったけどよ。
結局次の日、順平は真田にほぼ軟禁状態(召喚器付き)にされて自分との格闘の末『ペルソナ』を召喚したのだった。
撃ち抜いたときは痛みこそこなかったが衝撃が凄く、熱さでどうにかなるんじゃないかと思った。
自分のペルソナは分身というからどんなものだろうかと思っていたら、意外にも格好良かったので満足している。しかし順平よりも満足していたのは真田だった。撃ち抜いてペルソナが出た瞬間順平よりも喜んで、不敵な笑みで「やはりな…」とか呟いていたのである。
軟禁状態にして、言葉攻めを浴びせてオレの純情な心を蹂躙しておきながら、やはりも何もねぇだろ、オイ。と順平は思ったが口には出せなかった。
ンでも、1回撃ったからって、慣れることはない。ないない。絶対しばらくはない。あの感じはやっぱり慣れねえ。痛くは無ぇけど「今頭ブチ抜いたッ死んだッ」って思うもんなぁ、やっぱさぁ…と順平はもう1度と言われることを恐れていたが、真田は満足気に頷くだけで強要してこないので安心した。
その後は『特別課外活動部』のことや、あの転校生やゆかりが仲間だということを説明された。転校生たちがこんな力を持っていたことにはかなり驚いたが見知った顔がいるということは安心材料でもあった。
最後に確認するように「俺達に力を貸してくれるか?」と真田に聞かれたときには、思いっきり首を縦に振って、ついでに啖呵も軽く切っておいた。
確かに何度も頭撃ち抜くのは勇気がいるし、シャドウだって怖くないと言ったら嘘になるが、それよりも憧れ続けた『特別』が魅力的過ぎた。
オレにとっちゃあ単なるヒーローごっこ。遊び第一。刺激上等。
順平には特別な力と特別な居場所があれば十分だった。結果は後から付いてくる。いざとなったら誘ってきた真田サンを盾にでもすればいいか、なんて軽く思う程度だった。
それが、楽観主義の順平の甘いところだった。
「どうだ、召喚器の扱いにはもう慣れたか?」
「いやぁ…さすがに化けモン目の前にしてっから躊躇してらんねぇっスけど、撃つのはどーも慣れねぇっスねえ…」
「…そうか」
初めてタルタロスを攻略した夜、調子はどうかと真田が順平の部屋にきた時だった。
剣の扱い方だの、手入れの仕方だの、ペルソナの特性だの、タルタロスの構造だのと事細かに懸命に説明してくる真田を世話好きというか面倒見の良い先輩だなぁと、順平は身体の怠さを感じながらも感心しながら見つめていた。
これが本当の真田サンなら…確かに後輩想いの完璧な王子様ってところか…
あの時の玩具を見つけたような眼の危ない真田はきっとペルソナ呼び出した影響で興奮状態だったのだろう、そう思うぐらいになっていた。
やはり順平は甘かった。
真田とはあの力に目覚めたときから今まで、仲間ということでよく学校でも会えば会話するようになっており、だいぶ打ち解けて親しくなっていた。
そもそも順平は人懐っこく、気後れしない性格なので、真田にしてはかなり早く気兼ねなく話せる仲になっていた。
「凄ぇ身体重ぇ…ンでもまだ妙に興奮してなんかドクドクいってるっスよ」
「初めての戦闘だったからな、それはそうだろう。俺も疼くな…トレーニングも出来ていないし、欲求不満だ」
「筋トレはどれも身体に響きそーっスもんね…ンじゃあ、たまには…アバラ、イかない程度に女の子と遊べばいいんじゃないスかぁ?」
「…ああ、それもそうだな」
「へ…?」
思ってもみない答えが返ってきた。真田は無表情で流れのままに頷く。見た目では本気か冗談か判断できない。そもそも真田に冗談が言えるのか、通じるのかもわからない。
「いい加減イラついてたんだ。自分でするのも味気ないしな」
「へ、へぇ…ま、まぁ、真田サン相手ならこんな時間でも喜んで遊んでくれんじゃないスか?」
「誰が?」
「え、真田サンのファンの子とか…」
「俺があの子達の連絡先を知ってると思うか」
「…思わないスね」
「だろ」
「……」
「…、あ…順平…お前 」
何か思いついたような言い方をしたが、それから先の言葉を真田は発しなかった。ただ自分の召喚器を無表情に弄っているだけだ。
何か考えているような、何も考えていないような、髪と同じ色の銀色の瞳をボゥと虚ろにさせていた。
順平はそんな真田を暫く見つめていたが、次第に興奮が冷めていき、瞼に異常な重力がかかってきたのを感じた。どうやら興奮だけで何とか保っていたらしく、身体はかなり疲労しており回復を求めているらしかった。
やっぱ身体重ぇなぁ…つか眠ぃ…ンでも服着替えねぇとなぁ…あぁ帽子被ったまんまじゃんか、そうボンヤリと思った頃には身体はベッドに沈んでいた。
このまま意識を手放そうかと考えていると近くに人が寄る気配がした。真田が顔を覗きこんでいるのが何となく分かったが、まぁいいか、とそのまま寝ることに決めた。
……
さわさわさわ
暫くして夢と現実の狭間、夢うつつの状態でハッキリとしなかったが唇に何かが触れている気がした。なぞる様な感覚。指だろう。少し擽ったい気がしたが、瞼を開ける力を入れるのが億劫だったのでそのまま放っておいた。
しかし指で唇をこじ開け、歯をこじ開け、歯を舌を喉を暴れ回り絡ませる指の動きに噎せ返り、さすがに不快に感じて、薄く瞼を開きその動き回る指を掴んだ。
順平が非難の声を上げようとした瞬間、顎を掴まれベッドに強く後頭部を押し付けられる。掴まれた顎を無理やり持ち上げられ、さらに指を奥へと入れられ、掻き回された。喘ぐのを無視され、そのうち指5本、手が丸ごと口内に埋まり、出し入れされた。
重く閉じそうだった瞼は大きく開き、限界まで無理に開かされた口は両端が赤くなっていた。身体は強張り、口が閉じられないため呼吸は荒く不規則で、口端からは唾液が筋となって流れ、既にシーツを濡らしていた。
ンだ急に…ッ息できねっ吐くっっどういう流れになったらンなことになんだよ!?
順平はグルグルと弱まった思考をめぐらせてみるが真田の考えなどわかるはずもなかった。ただ、疲労した身体はもう寝ているような金縛りの状態で抵抗できない上に、順平がハッキリと重みを感じた時には真田は上に跨るようにして乗っていたため、開いた目をきつく閉じて眉を寄せることしか出来なくなった。
頭に、顔に血が上る感覚を覚えた頃、ようやく真田は順平の口から手を引いた。その、あとを引き、濡れて所々歯の当たった箇所が赤く染まっている手は酷く淫らに見えた。
「…う…何…」
「苦しかったか…目尻が濡れてる」
「っ…だから、…何スか…いきなり…、手ぇ突っ込むなんて…」
「何だかあれだな…まるで行為みたいだな、唾液が手に絡まる時の音といい…陵辱したみたいな気分になる」
「いや…みたいじゃなくて、したじゃないスか…ッ、口っ…口ン中…!」
「なぁ、せっかくだ。お前が俺と遊べよ…順平」
「話…聞いてんスか…っ真田サ…っ!?」
順平は息を飲んだ。また見てしまった。完璧な真田先輩が崩れていき、玩具を求めるアノ顔になる瞬間を。
手を引き抜かれたことで、若干力の抜けた順平の身体がまた強張る。乱された息のせいで胸と肩が深く上下する。そのうち、ピクリと身体が跳ねた。
違和感。順平は違和感を感じていた。動かない身体が熱くなってきて、下半身に熱が帯びていた自分に。
…オレ…まさか、ちょっと…口に指突っ込まれて…興奮してんのか…?
知識があっても身体は何も知らないままだった。口の中に指を入れられるのは医者ぐらいなもので、性的な意味を感じるなんてことは思ってもみなかった。
驚愕する順平に真田は顔を楽しそうに歪め自分の召喚器を取り出し、また顎を掴み上向かせ躊躇せずに口に突っ込ませた。
「っ!?…ぅ…」
「いい画だな…興奮する。初めから…お前がこれに怯えていたときから妙な感覚だったが…そうか、興奮するんだな…こういうの」
「…っ…う…うう…」
「本当なら本物の銃の方が興奮するんだろうな…弾が出るかもしれない、暴発するかもしれない…死ぬんじゃないかと意識した方が興奮しないか?なあ?」
銃で歯をなぞり喉に押し当てる。カチカチと歯と金属が当たる音と、順平の喘ぐような呼吸の音だけが部屋に響く。きつく閉じる瞼は苦痛にか興奮にか震え、目許や耳や、首のあたりは朱に染まっていた。
真田は存分に順平の口を召喚器で楽しむと、ゆるゆると引き抜き、そのまま濡れた召喚器を顎に移動させ、肌に密着させたまま耳の裏、首筋、鎖骨へと首にしたままだったシルバーネックレスのチェーンに引っ掛かるまで滑らせた。
片方の手で、ドレスシャツのボタンを外し始めたとき、順平の手が真田の手に絡みついた。
「…真田サン…何して……こ、こんなの…」
掠れた声に真田は含み笑う。順平の制止はまるで無意味だった。絡めた手はいくら疲労しているからといっても抑えるには弱過ぎる力で、口先だけの抵抗なのが傍からも分かる程のものだった。
順平はもうこの行為に酔っていた。口を手と召喚器で陵辱された驚愕と刺激で心は完全に砕けており、未経験のやわやわとした快楽に戸惑いつつも、性交に敏感な若い身体は簡単に落ちてしまったのである。
ドレスシャツのボタンを外し終え、前を肌蹴させると素肌が外気にあたってフルっと震えた。真田は順平の身体を眺めた後、止めていた召喚器をまたゆるゆると滑らせ、外気に晒されたせいで硬くなった胸の突起を銃口で押し潰した。
「っん…ッ、…つ…」
「痛いか…違うな?」
「あ…嫌だ…嫌だ…」
「間違うな。逆だろ」
「嫌…あ…な…何で…」
胸を刺激されて反応する自分に困惑して首を横に振る。否定すること義務付けられたように、また口先だけで順平は拒絶し続ける。
真田はまた楽しそうに目を細め、召喚器の刺激を強める。その度に順平は嫌がり首を振る。それとは逆に身体は足先が突っ張り、絡みついた手はビクっと震えた後、力なくシーツに落ち、そのシーツを引っ掻いたり握り締めたりしていた。
順平の意識が霞み始めた頃、刺激は不意に下腹にいきスラックスを履いたままの充血しているそこに召喚器の硬い質感が押し付けられた。
「っ …!」
途端に順平の顎が上がり、腿が打ち震えた。待っていた刺激だったが硬い感触が少し痛くてギシギシと歯を食いしばった。
しかし、真田は押し付けたまま動かなかった。ただ口角を上げて順平を見ているだけである。期待と不安の目を真田に向けても片眉を上げるだけで求める刺激を与えてはくれない。
「…ぁ…真田サン…?」
「あんまり怖がらないのも面白くないな。気持ち良さそうにしてるのもなぁ…」
「は…?」
「よくして欲しいんだろ?俺もそうなんだが」
「ぅ…どう、しろって…」
「…、…口で…」
「…は、…っ…っはァ?!ち…ちょっ、今何言おうと…ッ」
「…俺はアバラ折れてるんだぞ?」
「…だから…何スか…」
「指も召喚器も口に入れたんだ。もう何入れても、な?」
「…、…」
順平の惚けていた顔も焦点を失いかけた瞳もみるみる覚醒し、次に顔に血が上り、充血は瞳にまで達した。そしてその瞳は非難と憤りに染まり真田を睨みつけた。
それでも真田は順平の熱に溺れた姿が消えたのが残念だと言いたげに肩を落としただけだった。
「信じらんねえ…オレに…真田サンの咥えろっつーんスか…っ」
「お前もその気になってたじゃないか」
「っ…、…も…いいっス。自分でヤるっスから」
「自分で?見せてくれるのか」
「ンなわけないっしょ…ッ出てって っン…ッ!?」
押し付けられたままだった召喚器に動きが出る。順平は声を出るのを我慢しているのか、さっきまでの勢いが消え、また歯を食いしばった。
真田の銀色の瞳は瞬時に冷たさを帯び順平を見下ろした。
「俺が指や召喚器を口に入れたように…無理に入れられる方が好みか?」
「…っ」
「奉仕されるのは好きなくせに、するのは嫌か。我が儘だな」
「っ…ンな…勝手…ッ」
「分かった。分かった」
真田は順平の上から退くと同時に座った自分の足の上に順平を反転させて乗せ、うつ伏せになった格好の順平の腰をしっかりと掴む。まるで小さい子がお仕置きに尻を叩かれるような格好になり、順平は肩越しに悔しそうに顔を歪め、どこか怯えた瞳を向ける。
真田の手は順平のベルトにいき、緩めるとそのまま下着ごと腿の辺りまでずらす。順平は羞恥に力無い身体を必死にバタつかせ、もがき暴れるが、秘所に召喚器を押し付けられると、ヒクリとした後、動きを止めた。また肩越しに振り向き見上げる顔は青ざめていて不安に瞳が揺らいでいた。
「奉仕されるのが好きなお前には…こっちでスッキリしてもらおうか」
「…嘘…だろ…?…真田サン…そっち踏み込んだら、終わり…ただの変態っスよ」
「それで?それを知ってるのはお前だけだろ、順平」
順平は身体を微かに跳ねさせ目を閉じた。順平…そう真田に名前を呼ばれると痺れが走った。真田にこんなことをされてるのは自分だと感じさせられるからか、それとも別か。
握った拳が熱い、密着している部分が熱い、押し当てられる金属は冷たいはずなのに…熱い。
ヤバイ、飲まれる。そう焦った。最初はいきなりのことに驚いたが、与えられる刺激は不快じゃなかった。熱に浮かされ、まぁ一発抜いてもらうのもいいかなんて思っていた。しかし、前ならず後ろとなると話は別だ。そっちのケは全くなかったし、踏み込んではいけない、踏み込むはずも無い領域だった。明らかに痛みを伴うそれは絶対にごめんだった。
つか、絶対ぇ入んねぇし。死ぬほど痛そうだし硬そうだし…だからって、真田サンのモン咥えるのはキっツイだろ。手で扱くなら別にいいけどさぁ、口って…そういうのから性病とかなったりすんじゃん。いや、そもそもグロい。汚ぇ。自分のだって咥えたくねぇよ。
知識はあるものの、経験が全くない順平は性器を口に触れさすのはかなり抵抗があった。女の子のものですら、あまりしたくないと思うほどに嫌悪感があるのだ。ここはとりあえず引き下がり咥えるという選択肢は順平にはなかった。
「別に…そう固くならなくても遊びじゃないか。お互い性処理できるだろ」
「ッ…う…あ…」
降ってきた声はさっきより、優しく、諭すようだった。しかし、押し当てられた召喚器は秘所の周辺や、性器までの縫い目のようになっている箇所をなぞるように刺激を与えた。
これまた、初めての刺激に皮膚がざわつき、半身が充血してくるのを順平は感じた。それでも首を必死に振りこんなところを刺激されて反応している自分を否定した。そしてやはり咥えるなどという選択肢は存在しなかった。
「なぁ、順平」
「っ…何…セフレになれっつーんスか…」
「俺はただ面白いから遊んでいたいというか…」
「っ…何…玩具になれっつーんスか…」
「じゃあなってくれ」
「なるわけっ…ないでしょーが…ッッ」
「意外と細かい奴だな…咥えるだけだろ。バナナやアイスキャンディーだと思えば 」
「アンタ馬鹿だろ真田サンッ!!見た目がそんないいモンかよ…ッ、…大体…手で扱くならいいんスよ。真田サンだってオレの咥えんのキツイっしょ」
「いや、別に」
動いていた召喚器が止まり、腰がより上に上げられた。肩越しに振り返ると真田が先程まで弄っていた箇所に頭を下ろし、舌を伸ばそうとしていたところだった。
順平は逃げるように身体を捻り、大声で阻止しようと喚き散らした。すると、真田の動きは止まり、少し焦ったように声がでかいと注意して大きく溜息を吐いた。
「ままま待って待って…ッ真田サンに舐められたり咥えられたりしたら、オレも咥えなきゃならなくなるじゃないっスか…ッッそもそもそんなトコっ考えられねぇっスよ!」
「そんなに嫌か…、…仕方ない」
諦めたように順平を離す真田に、助かったのかと心底安心したように息を漏らした。それでも少し残念というか中途半端のままの刺激が疼いているように感じた。抜くだけ抜いてくれればいいのに、と思いつつ一線を越えることは免れたので、とりあえずいいかと思いながらスラックスを引き上げる順平に恐怖する声が降ってきた。
「今日はまぁいい。部屋じゃ騒がれたら不味いしな。続きはまた後日、だな。楽しみはとっておくのがセオリーだ」
キャァァとかヒィィとか変な声が順平から漏れた。反射的な絶叫だった。出たよセオリー。正確には『真田的セオリー』。聞いたことのある台詞があの恐怖を思い出させる。召喚器で頭を撃つときに発した開放すると同時に追い込む台詞だった。結局準備万端で逃げ道を完全に塞ぎ精神的に追い込ませ、強制的にさせるという捉えようによっては犯罪行為スレスレな荒技はトラウマ的体験として順平に植え付けられていた。
「お前のあの顔で今日のところは処理するか…なかなか楽しかった、おやすみ順平」
呼び止めようと伸ばした手の先でパタンとドアが閉まった。順平は嫌な汗が体中から噴き出し、身体が震えてくるのがわかった。結果的に最悪の事態になるよう演出してしまったのだ。やはり順平は甘かった。
真田の優しさは後の恐怖であり、天使の微笑みは地獄行きへのカウントダウンであり、王子ぶりはただの自己中心的であることを騒いでいた女の子のファンたちに教えてあげたいと順平は力なくベッドに沈んだ。身体的疲労より精神的疲労が勝っていた。
そして次の日順平は風邪を引いた。かなりの高熱だった。
ゆかりにはタルタロスの後深夜番組でも見て夜更かししてたんでしょ、バカじゃないの、と言われたが思いついたことは絶対口にできなかった。
真田は大丈夫かとあれこれ面倒を見てくれた。優しい…そしてその優しさが怖い。
風邪は2日目にはだいぶマシなっていたが、しばらく治らないフリをし続けた。
順平は少し甘くなくなった。
to be continued. 2007/08/10